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おだのぶなが

織田信長

坂口 安吾

「季刊作品 第一号」創芸社、1948(昭和23)年8月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,950 字 · 36 页

青空文庫

これは後日の話であるが、信長が天下を握って、御所を修理したり、お金を献上したり、色々と忠勤をつくして朝廷の衰微を救ったという。このとき、信長が京都の町民に米を貸して、その利息米を朝廷の経済に当てる方法を施した。この利息米のアガリが大体一ヶ月に十三石ぐらいであった。十三石の半分を朝廷で細々とたべる。半分を副食物や調味料にかえる。信長が衰微を救ったという。救われて、ようやく、これぐらいのもので、雲の上人は、まったく悲惨な生活であった。

天皇は皇子皇女をたいがい寺へ入れる。皇女の方は尼だ。関白も大納言も、そうだ。足利将軍もそうだ。子供は坊主や尼にする。門跡寺、宮門跡などと云って、その寺格を取引にして、お寺から月々年々の扶持を受けるという仕組であった。そのほかには暮しの手だてがなかった。

万里小路大納言惟房も、松永弾正という老蝮の目玉は怖しい。然し、お米をたらふく食べてみたい。だから、こまった。大変なことになった、困った、困った、と言った。

けれども、煩悶しながらも、筆をとって、二通の綸旨をかいた。上房子が女房奉書をかいた。これを立入左京亮に渡しながら、あゝ、大変なことになった、こまったこまった、と、まだ大納言はつぶやいていた。