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びしょうじょ

美少女

太宰 治

「月刊文章」1939(昭和14)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,623 字 · 11 页

青空文庫

自信たっぷりで、窓縁に頬杖ついて、往来のほうを見ていた。猫と女は、だまって居れば名を呼ぶし、近寄って行けば逃げ去る、とか。この少女も、もはや無意識にその特性を体得していやがる、といまいましく思っているうちに、少女は傍のテエブルから、もの憂げに牛乳の瓶を取りあげ、瓶のままで静かに飲みほした。はっと気附いた。病身。あれだ、あの素晴らしいからだの病後の少女だ。ああ、わかりました。その牛乳で、やっとわかりました。顔より乳房のほうを知っているので、失礼しました、と私は少女に挨拶したく思った。いまは青い簡単服に包まれているが、私はこの少女の素晴らしい肉体、隅の隅まで知ってる。そう思うと、うれしかった。少女を、肉親のようにさえ思われた。

私は不覚にも、鏡の中で少女に笑いかけてしまった。少女は、少しも笑わず、それを見て、すらと立って、カアテンのかげの応接間のほうへゆっくり歩いて行った。なんの表情もなかった。私は再び白痴を感じた。けれども私は満足だった。ひとり可愛い知り合いが、できたと思った。おそらくは、あの少女のこれが父親であろう主人に、ざくざく髪を刈らせて、私は涼しく、大へん愉快であったという、それだけの悪徳物語である。