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びだんしとたばこ

美男子と煙草

太宰 治

「日本小説」1948(昭和23)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,526 字 · 9 页

青空文庫

さすがの酒豪たちも、ウイスキイのドブロクは敬遠の様子でした。

私だけが酔っぱらい、

「なんだい、君たちは失敬じゃあないか。てめえたちが飲めない程の珍妙なウイスキイを、客にすすめるとは、ひどいじゃないか。」

と笑いながら言って、記者たちは、もうそろそろ太宰も酔って来た、この勢いの消えないうちに、浮浪者と対面させなければならぬと、いわばチャンスを逃さず、私を自動車に乗せ、上野駅に連れて行き、浮浪者の巣と言われる地下道へ導くのでした。

けれども、記者たちのこの用意周到の計画も、あまり成功とは言えないようでした。私は、地下道へ降りて何も見ずに、ただ真直に歩いて、そうして地下道の出口近くなって、焼鳥屋の前で、四人の少年が煙草を吸っているのを見掛け、ひどく嫌な気がして近寄り、

「煙草は、よし給え。煙草を吸うとかえっておなかが空くものだ。よし給え。焼鳥が喰いたいなら、買ってやる。」

少年たちは、吸い掛けの煙草を素直に捨てました。すべて拾歳前後の、ほんの子供なのです。私は焼鳥屋のおかみに向い、

「おい、この子たちに一本ずつ。」

と言い、実に、へんな情なさを感じました。