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びだんしとたばこ

美男子と煙草

太宰 治

「日本小説」1948(昭和23)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,526 字 · 9 页

青空文庫

それはね、僕が美男子であるという理由からに違いない。」

みんな大笑いしました。

「いや、冗談じゃない。君たちには気がつかなかったかね。僕は、真直を見て歩いていても、あの薄暗い隅に寝そべっている浮浪者の殆ど全部が、端正な顔立をした美男子ばかりだということを発見したんだ。つまり、美男子は地下道生活におちる可能性を多分に持っているということになる。君なんか色が白くて美男子だから、危いぞ、気をつけ給え。僕も、気をつけるがね。」

また、みんながどっと笑いました。

自惚れて、自惚れて、人がなんと言っても自惚れて、ふと気がついたらわが身は、地下道の隅に横たわり、もはや人間でなくなっているのです。私は、地下道を素通りしただけで、そのような戦慄を、本気に感じたのでした。

「美男子の件はとに角、そのほかに何か発見出来ましたか。」

と問われて私は、

「煙草です。あの美男子たちは、酒に酔っているようにも見えなかったが、煙草だけはたいてい吸っていましたね。煙草だって、安かないんだろう。煙草を買うお金があったら、莚一枚でも、下駄一足でも買えるんじゃないかしら。コンクリイトの上にじかに寝て、はだしで、そうして煙草をふかしている。