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はごろもものがたり
羽衣物語
小川 未明
「コクミン一年生」1946(昭和21)年2、3月、「コクミン二年生」1946(昭和21)年4月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,149 字 · 12 页
かすみを切ったようにも思われるのでありました。
「いったい、この着物は、だれのものであろうか。」
若者は、頭をかしげ、思案にくれました。
松原の中は、しんとして、ときどき、小鳥の鳴き声が聞こえるくらいのもので、あたりを見まわしても、まったく人のいるような気はしませんでした。
若者は、はじめて見るものだけに、さわるのが恐ろしくもあれば、また、あまりきれいなので、手をつけては悪いような気さえしましたが、ついに、もの珍しさのあまり、勇気を出して、自分の手に取り、つくづくとながめたのでした。
「これは、人間などの着るものでない。天上高く、わしかたかが、どこからかくわえてきて、ここへかけていったものだろう。なんにせよ、またと得がたい、とうといものだ。こんな宝が手に入るとは、なんという自分は幸せものではないか。村の人たちに見せたら、さぞ、うらやむことだろう。」と、若者は、ほくほく、よろこびました。
その着物をおしいただいて、いまやそこを立ち去ろうとしたときであります。うしろへ小さな足音がして、鈴をふるような、さわやかな声で、
「もし、もし。」と、呼びかけたものがありました。