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ほんやくのかち

翻訳の価値

宮本 百合子

「ゴロヴリョフ家の人々」にふれて

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,126 字 · 7 页

青空文庫

概して今日の読者は、作品をそんな風に感じてよんだりしなくなっていて、題だの筋だので買うとでも云うのだろうか。

文化の粗末さについては、作家もいくらかの責任を感じなければならないと思った。せめて文学書の翻訳に対して、作家は作家として、もう少し責任ある関心をもち研究や発言もして行かなければならないのだと思う。さもないと、読者は、フランスの世界史的意味の退敗をさえ、ブルージェが夙に「家」で警告していたとおり、家の観念の崩壊がフランスの今日をあらしめたというような、牽強も甚だしい広告にもつられなければならない。いい加減の訳をよまされた上、景品として世界的現実の劇画まで与えられることは、私たちとして辞退したく思うのである。

体位の向上がひろく云われている以上、精神の体位を向上させることも、現代の任務の一つな筈である。

そんなことを考えていた折から河出書房版、新世界文学全集第十一巻、シチェードリンの「ゴロヴリョフ家の人々」が配本されて来て、非常に興味をひかれ、今三分の二ほどよみ進んでいる。

この小説の訳者は、少くとも原文に忠実であろうとするあらゆる努力を惜んでいない。