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ろうふうふ

老夫婦

黒島 伝治

1925(大正14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,957 字 · 27 页

青空文庫

」

ばあさんは田舎のことを思い出しているのだった。うちとは田舎の家のことだった。

「お、やっぱりドン百姓でも生れた村の方がえいわい。」

夕方、息子夫婦がつれだって帰ってきた。

「お土産。」と園子は紙に包んだ反物をばあさんの前に投げ出した。

「へえエ。」思いがけなしで、何かと、ばあさんは不審そうに嫁の顔を見上げた。

「そんな田舎縞を着ずに、こしらえてあげた着物を着なされ。」と、嫁より少しおくれて二階へ行きながら清三が云った。

ばあさんは、じいさんの前で包みを開けて見た。両人には派手すぎると思われるような銘仙だった。

「年が寄ってえい着物を着たってどうなりゃ!」両人はあまり有りがたがらなかった。「絹物はすぐに破れてしまう。」

六

「あれに連れて行て貰うよりゃ、いっそうら等二人で行く方が安気でえいわい。」ある日じいさんはこう云い出した。

「道に迷やせんじゃろうかの。」

「なんぼ広い東京じゃとて問うて行きゃ、どこいじゃって行けんことはないわいや。」

そして、ある朝早く、両人は出かけた。

「お前等両人でどこへ行けるもんか。」出かけしなに清三は不安らしく止めた。

「いゝや、大事ない、うら等二人で行くんじゃ」