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ろうぎしょう

老妓抄

岡本 かの子

「中央公論」1938(昭和13)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,601 字 · 31 页

青空文庫

はじめは軽蔑した超然とした態度で、一人離れて、携帯のライカで景色など撮していたが、にわかに柚木に慣れ慣れしくして、柚木の歓心を得ることにかけて、芸妓たちに勝越そうとする態度を露骨に見せたりした。

そういう場合、未成熟の娘の心身から、利かん気を僅かに絞り出す、病鶏のささ身ほどの肉感的な匂いが、柚木には妙に感覚にこたえて、思わず肺の底へ息を吸わした。だが、それは刹那的のものだった。心に打ち込むものはなかった。

若い芸妓たちは、娘の挑戦を快くは思わなかったらしいが、大姐さんの養女のことではあり、自分達は職業的に来ているのだから、無理な骨折りを避けて、娘が努めるうちは媚びを差控え、娘の手が緩むと、またサーヴィスする。みち子にはそれが自分の菓子の上にたかる蠅のようにうるさかった。

何となくその不満の気持ちを晴らすらしく、みち子は老妓に当ったりした。

老妓はすべてを大して気にかけず、悠々と土手でカナリヤの餌のはこべを摘んだり菖蒲園できぬかつぎを肴にビールを飲んだりした。

夕暮になって、一行が水神の八百松へ晩餐をとりに入ろうとすると、みち子は、柚木をじろりと眺めて