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ろうぎしょう
老妓抄
岡本 かの子
「中央公論」1938(昭和13)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,601 字 · 31 页
や、反感を持ちながら、妙に粘って来る態度が心にとまった。
彼女のこの頃の来方は気紛れでなく、一日か二日置き位な定期的なものになった。
みち子は裏口から入って来た。彼女は茶の間の四畳半と工房が座敷の中に仕切って拵えてある十二畳の客座敷との襖を開けると、そこの敷居の上に立った。片手を柱に凭せ体を少し捻って嬌態を見せ、片手を拡げた袖の下に入れて、写真を撮るときのようなポーズを作った。俯向き加減に眼を不機嫌らしく額越しに覗かして
「あたし来てよ」と云った。
縁側に寝ている柚木はただ「うん」と云っただけだった。
みち子はもう一度同じことを云って見たが、同じような返事だったので、本当に腹を立て
「何て不精たらしい返事なんだろう、もう二度と来てやらないから」と云った。
「仕様のない我儘娘だな」と云って、柚木は上体を起上らせつつ、足を胡坐に組みながら
「ほほう、今日は日本髪か」とじろじろ眺めた。
「知らない」といって、みち子はくるりと後向きになって着物の背筋に拗ねた線を作った。柚木は、華やかな帯の結び目の上はすぐ、突襟のうしろ口になり、頸の附根を真っ白く富士形に覗かせて誇張した媚態を示す物々しさに較べて、帯の下の腰つきから裾は、一本花のように急に削げていて味もそっけもない少女のままなのを異様に眺めながら、この娘が自分の妻になって