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ろうぎしょう
老妓抄
岡本 かの子
「中央公論」1938(昭和13)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,601 字 · 31 页
て、養女にして女学校へ通わせたのもその現れの一つである。彼女の稽古事が新時代的のものや知識的のものに移って行ったのも、或はまたその現れの一つと云えるかも知れない。この物語を書き記す作者のもとへは、下町のある知人の紹介で和歌を学びに来たのであるが、そのとき彼女はこういう意味のことを云った。
芸者というものは、調法ナイフのようなもので、これと云って特別によく利くこともいらないが、大概なことに間に合うものだけは持っていなければならない。どうかその程度に教えて頂き度い。この頃は自分の年恰好から、自然上品向きのお客さんのお相手をすることが多くなったから。
作者は一年ほどこの母ほども年上の老女の技能を試みたが、和歌は無い素質ではなかったが、むしろ俳句に適する性格を持っているのが判ったので、やがて女流俳人の××女に紹介した。老妓はそれまでの指導の礼だといって、出入りの職人を作者の家へ寄越して、中庭に下町風の小さな池と噴水を作って呉れた。
彼女が自分の母屋を和洋折衷風に改築して、電化装置にしたのは、彼女が職業先の料亭のそれを見て来て、負けず嫌いからの思い立ちに違いないが、設備して見て、彼女はこの文明の利器が現す働きには、健康的で神秘なものを感ずるのだった。