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ゼロントロジイ
老齢学
中谷 宇吉郎
――長生きをする学問の存在――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,160 字 · 15 页
それから一昨年は、南米のアルゼンチン政府に頼まれ、アンデス山脈の上を縦横に六カ月もとび歩いていたはずである。
きいてみると、ヒマラヤに登ったのは、八十歳の時であり、アンデスの調査は、八十一歳の夏であったという。これくらい話の桁がはずれていれば、こちらの誤解にも愛嬌が出て来る。御本人は、昨年の春大学から引退をすすめられたのが、大いに不服らしく、「大学は僕を老人扱いしている」と、初対面の日に私に文句をいっていた。
ところが、上には上がある。チャーチ博士の紹介で、ミシガン大学のホップス先生に会ったら、「僕は八十九歳だ」という。念のために日本流でことわっておくと、九十一歳である。このホップス先生は三十年前に、ミシガン大学がグリーンランドへ探検隊を出した時の隊長である。地質学者であるが、気象学にも興味をもち、グリーンランドの大氷原の上で空気が冷え、その大冷気塊がのび出して来て、世界の気象を支配するという大論文を書いたことがある。
この大論文は、もちろん現代の気象学者からは、態よく敬遠されている。老先生は、それが大いに御不満であって、「昨年もあの説を少し修正して雑誌に出しておいたのに、誰も何ともいって寄こさない」