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たんでき

耽溺

岩野 泡鳴

在线阅读岩野 泡鳴《耽溺(たんでき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,597 字 · 110 页

青空文庫

「おッ母さんはそりゃアそりゃア可愛がるのよ」

「独りでうぬぼれてやアがる。誰がお前のような者を可愛がるもんか? 一体お前は何が出来るのだ?」

「何でも出来る、わ」

「第一、三味線は下手だし、歌もまずいし、ここから聴いていても、ただきゃアきゃア騒いでるばかりだ」

「ほんとうは、三味線はきらい、踊りが好きだったの」

「じゃア、踊って見るがいい」とは言ったものの、ふと顔を見合わせたら、抱きついてやりたいような気がしたのを、しつッこいと思わせないため、まぎらしに仰向けに倒れ、両手をうしろに組んだまま、その上にあたまをのせ、吉弥が机の上でいたずらをしている横がおを見ると、色は黒いが、鼻柱が高く、目も口も大きい。それに丈が高いので、役者にしたら、舞台づらがよく利くだろうと思いついた。ちょっと断わっておくが、僕はある脚本――それによって僕の進退を決する――を書くため、材料の整理をしに来ているので、少くとも女優の独りぐらいは、これを演ずる段になれば、必要だと思っていた時だ。

「お前が踊りを好きなら、役者になったらどうだ?」

「あたい、賛成だ、わ。甲州にいた時、朋輩と一緒に五郎、十郎をやったの」