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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页
空気ボンベを背負うと、百メートルぐらいまでもぐれるそうだから」
「道具は?」
「道具は大池の伜が持ってきた。あれ一人にやらせるわけにもいくまいから、指導してもらって、交代でやるんだな……電話で報告しておいてもらおうか。本庁の連中がジリジリして待っているだろうから」
事故係の警官は敬礼をしてロッジから出て行った。
「丸山さん、お聞きしたいことがあるんだけど……」
捜査主任は箸の先に飯粒をためたまま、まじまじと久美子の顔を見返した。
「おう、そうだった……君の昼食を忘れていたよ」
「どうか、ご心配なく……」
久美子は言いたいだけのことを言ってやるつもりで、捜査主任と向きあう椅子にかけた。
「食べることなんか、どうだっていいけど、あたし、これからどうなるのか、お聞きしたいの……大池夫人は出て行けっていうけど、そういうわけにもいかないでしょう? 遣瀬ないのよ」
捜査主任は禿げあがった額をうつむけて、含み笑いをした。
「お察しするがね、気にすることはないよ」
「どうしても、ここに居なくちゃならないの?」
「どうしてもということはない。和歌山へ行こうと伊那へ行こうと、それは君の自由だ。