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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页
「バンガロー……いいだろう」
「あたしはK・Uじゃないから、頼まれたって後追い心中なんかしません。その点、ご心配なく」
捜査主任はアルミの弁当箱をハトロン紙で包みながら、
「腹をたてているようだが、それは君が悪いからだよ」
と宥めるような調子でいった。
「偽名をつかったり、絵描きでもないのに絵描きだといったり、怪しまれるのは当然だ……君は東洋放送の宇野久美子というひとだろう」
「お調べになったのね」
「それはもう、どうしたって」
「あたしがK・Uでないことは、おわかりになったわけね」
「言ってみたまえ」
「お調べになったことでしょうから、ごぞんじのはずだけど、一月から四月の末まで、どの放送にも出ていました……最近のひと月は、病気でアパートにひき籠っていたし……」
「それで?」
「大池は今年のはじめごろから、K・Uという女性と二人で、日本中を逃げまわっていたということですが、すると、あたしはK・Uであるわけはないでしょう? そんな暇はなかったから」
「その点は諒承したが、さっぱりしないところがある。ここへ来る前日、君は家財道具を伊那へ送っている。郷里の和歌山へ帰るといって、十時何分かの大阪行に乗ったはずの君が、伊豆のこんなところにいる……なぜ、そういう複雑なことをするのか、その辺のところを説明してくれないかぎり、われわれは同情