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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

できるだけ早くぬけだしたいと思うだろう」

「そうはいうが、あいつはひどく敏感だから、かんたんには欺せないよ……泳ぎだすどころか、昨夜はバンガローで朝まで眼をあいていた」

久美子は重苦しい意識の溷濁の中で覚醒した。

眼をあいて瞬きをしているつもりなのに、冥土の薄明りとでもいうような、ぼんやりとした微光を感じるだけで、なにひとつ眼に映らない。

湿っぽいブヨブヨしたものの上に仰臥しているのだが、虚脱したようになって身動きする気にもならない。なにかもの憂く、もの悲しく、ひとりでに泣けそうになる。

この感覚におぼえがあった。

「……また、やった」

夜明しのパーティでつぶれてしまい、やりきれない疲労と自己嫌悪の中で眼をさますあの瞬間――眼をさましたといっても、はっきりとした自覚があるわけではない。遊び呆けたあとの憂鬱が身体に沁みとおり、わけもなく飲みつづけたコクテールやジン・フィーズの酔いで手足が痺れ、そのまま、ふと夢心地になる……

「それにしても、あたしはどこにいるんだろう」

掌で身体のまわりを撫でてみる。マトレスの粗木綿のざらりとした感触。マトレスの下は冷え冷えとしたコンクリートの床だ。