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かんぞうせんせい
肝臓先生
「文学界 第四巻第一号」1950(昭和25)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,194 字 · 46 页
司会者が立上って、
「さて、この景品には一つの約束がついております。まずクジをお当てになったお方がヤマト煮のカンヅメを赤城先生のオツムに乗せてさしあげます。赤城先生はオツムのカンヅメを落さずに、象をひいて、三べん座を廻っていただかねばなりません」
クジを当てた娘は、美しくて、しとやかで、この町で評判のお嬢さんであった。事の意外に驚いたのは赤城先生とお嬢さんだが、一座の人々はヤンヤ、ヤンヤと大よろこび、大カッサイ。
お嬢さんも仕方がない。意を決して、カンヅメを赤城先生の頭にのっけてあげる。サラバと先生も立上ろうとしたが、カンヅメが落っこちそうでグアイがわるいから、かるく手でおさえ、象をひッぱって静々と三度廻った。拍手カッサイ、鳴りもやまず。
記念すべき一日であった。
まことにウカツ千万な話だ。赤城先生はこの日に至って、自分が町の人々に「肝臓医者」とよばれていることを、はじめて知ったのである。
先生は感慨無量であった。
先生と肝臓炎との出会は、はじめから劇的奇怪性突飛性をはらみ、煩悶、混乱、先生をして右往左往せしめてきた。ために先生は骨をけずり肉をそぎ、したたる汗に血涙のにじむ月日を重ねたのである。