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のうめんのひみつ
能面の秘密
「小説新潮 第九巻第三号」1955(昭和30)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,440 字 · 35 页
ところが東京からの報告によると今井の申し立てたアリバイはきわめてアイマイだ。新宿の飲み屋でもそういう常連はなく心当りがないような話で、彼の申立てを証明したのは女房だけだ。夜中の十二時ごろ戻ってきてそのまま正体なく翌朝おそくまで寝こんでいたというだけだ。
翌る朝刊の辻の記事では浩之介も今井もそれぞれアリバイが不明確でその裏附け捜査が行われている、ということが伝えられていたが、また浩之介と奥さんの共犯の線もでていると書かれていた。たのみになるのがメクラ一人の証言だから特ダネを握って颯爽と出発した辻も早くも捜査難航、キメ手がないと訴えている有様であった。
*
奥さんがゆすりのこととなると相変らず断然ゆすられた覚えがない、それはメクラの空耳だと言いはるものだから、オツネはやるせない思いで暮さなければならなかった。
「これもみんな辻さんの罪ですよ」
と恨むものだから、辻もせつない。
「いまに真相をつかんで君の顔をたててやるからな」
と云ってはいるが心はうかない。本社からはこの特種を生かすために応援の記者を送ってよこしたが、こうなると支社と本社の記者同士で功名を争う気持になるから、面子にかけてもという気魄だけが悲愴になりすぎて毎日酒をのまずにいられない気持だ。