轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

じさつをかうはなし

自殺を買う話

橋本 五郎

「探偵趣味」1927(昭和2)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,685 字 · 16 页

青空文庫

閑寂から雑沓への、郊外の電車は込まなかった。彼は若い女達の、明かに衣服の美を羨望する、そのひそやかな視線を全身に感じた。だが、そうした女性特有の敏感さも、それ等異性の体臭と共に、今日は彼にも快かった。

同時に彼は、昨日以来の突然な幸福を、絹物の肌触りの中で、まるでひと事のように考えていた。恩人の使いが何を意味しているのか、何故にかく、一介の自分が不当の財を受け得たのか、それを考え進めることさえも出来なかった。彼はただ、幸福な夢の中に揺られていた。

電車を乗り換え、乗り捨てると、彼は示された町を訊ねた。そこは山の手の、屋敷の多い通りであった。

何かあるんだな、と彼が思ったのは、暗い町柄にもかかわらず、かなりの人数が右往左往していることだった。しかもひとところ、煌々と無数に臨時燈をかかげ、その真昼のような明るさの中に、青磁色無地、剣かたばみを大きく染め残した式幕で門前を廻らし、その左右に高張りを立てて、静まりかえった大家を見た。門前に一台の自動車が置かれていた。

右往左往の人々は、多くはこの家から出たり入ったりした。

宴会かな、とふと高張りの字に眼を止めた彼は、思わずおやッと足を止めた。