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しぜんのめぐみ

自然の恵み

中谷 宇吉郎

――少国民のための新しい雪の話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,154 字 · 19 页

青空文庫

それではどうにも観察のしようがない。それで夜大分晩くなって、気温が下がった時か、或いは千メートル程度の高さの土地かで、観察をしなければならない。本州の中央部で千メートルの高さのところだと、だいたい北海道の平地の気候と思ってさしつかえない。それで北陸や東北の平地では夜の寒い時、信州の山がかったところではひるも、観測が出来ると思ってよいであろう。寒ささえ充分ならば、あとは外套の腕を曲げて、顔をそっちへ向けるだけでよい。夜見世で売っている程度の虫眼鏡があれば、なお結構である。

少し山がかったところへスキーなどに行った時、雪の上に腰を下して、袖にふりかかる結晶を覗いてみるのは、非常に楽しみなものである。風があまりなくて、硼酸の粉のような雪がちらちら降って来る時は、たいてい六花の結晶、即ち雪の代表的な結晶である。非常に薄い平板状の結晶で、面はなめらかに光っている。形はいろいろあるが、皆六本の枝が中心から規則正しく六方へ伸び出た形になっている。まれに六角板も降ることがあるが、日本ではこの六角板は皆小さいので、よく注意しないと見逃すことが多い。細かい小枝がたくさん出ていて、羊歯の葉のような形をした枝が、中心から六本出ている結晶が、代表的な六花結晶である。