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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

順子は、遠くから首を曲げ、

「なあに?」

という思い入れだ。早くったら! のんきね。ミサ子がもう一遍袂を振ってランニングの身ぶりをし、おいでおいでをゲンコのまんまの手でしたときだ。いきなり、

「おい! 何してる、そこで!」

びっくりしてミサ子が振向くと、立っているのは、縞のネクタイをつけた背広の男だ。

「え? 何してるんだ、ここで!」

ミサ子は凝っとその男を睨み、それから守衛の方を見た。変な、何か悪ふざけをしかける男かと思ったのだ。が、守衛は、金モールで××商事のマークを縫った詰襟の上から、冷淡な軽蔑した口元をしてミサ子を見下している。――

ミサ子には訳がわからない。

「――私何かわるいことをしたんですか?」

「何か悪いこと? 人を小馬鹿にしたことを云うもんじゃない! う? 大体何と心得てるんだ。この頃の女どもと来たら変な洋服で一日じゅうとび廻るかと思いや、ふざけた恰好して……さ、名と部を書け。あとで厳重に処分するから」

受付へミサ子はさっさと歩いて行った。縞ネクタイの男は、片手をズボンのポケットへ突込んだまんま、顎をしゃくって、

「おい、この女に紙と鉛筆をやる」