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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
「いつがいい?」
と訊いた。順子は顔をいきなり逆撫でされたような表情のまんま、
「あさってで私はいいけど」
二人が話している間に、縞ネクタイはどっかへ行ってしまった。
「誰? あいつ」
「大沢っての、庶務よ」
「――じゃあさってね」
「ええ」
ミサ子は××商事の壮大な玄関を一段ずつ降りるとき、憤怒でまだ脚が震えるのを感じた。
四
胸糞がわるいとしか云いようのない心持だ。昼、地下室の食堂へ女事務員があつまったとき、ミサ子は今朝の経験を話した。
「ひどいわねエ、ひとを何だと思ってるんでしょう!」
「××商事の大沢ってば有名なのよ」
「一体、大会社の庶務だの守衛だのって、きっと巡査上りだとか刑事上りよ。馬鹿にしてるわ!」
一つむこうのテーブルでは給仕達が夢中になってラグビーの話をしながら飯をかっこんでいる。こっちのテーブルで、女事務員たちはめいめいの粗末な膳の上から首をつき出すようにし、一人一人そのとき口を利いてる仲間の顔を見ながら熱心に喋った。
××○○会社と云えば日本で指折りの大会社だが、その丸の内を圧すように聳え立つ建物で働いている人間の中には、はたに知られない不満がある。