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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
「さ、二人っきりで私却ってうれしいわ! 急にこんなこと云って、あなた妙に思うかもしれないけど、私淋しいのよ。だから、つきあって――ね?」
三省堂の喫茶部へ入った。ミサ子は紅茶を、みどりは伏目になってソーダ水をのんでいたが、
「こんな話をするの今日はじめてね、あなた、私をどんな女だと思う?」
落ついてさし向いになって見ると、ざっくばらんな、いじらしいところを感じ、ミサ子は、
「私なんかあなたなんぞのお歯に合わないと思ってたわ」
と正直に云った。
「そうオ?」
ソーダ水をストローでかきまわしながら、やっぱり伏目のまんま、
「私は違うわ、あなたはわりあいお高くとまってないから、初めっからすきだったわ」
「…………」
「ね、大井田さん」
耳のまわりの捲毛をふるように頭をあげ、
「あなた、勤め辛くない?」
喰い入るような黒い眼でみどりはミサ子を見つめた。
「そりゃとても癪なときがあるわ」
だが、みどりの眼には、そんなミサ子の言葉以上の切ないものがある。我知らずつり込まれて、
「あなたの方も、えらい?」
「違うわ! そりァちがうわ。あなたのはとにかく大会社だけれど私のは個人経営だし……丸ビルの中なんて、トッテモひどいワ」