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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

沖本がかがみこんだ。

「へ、あたしがね、ここんところを拭いていると佐田さんがはばかりから出て来てね、ああ気分がわるいって、窓の方向いてぼんやりしてたかと思うとよろよろっとして倒れそうんなったんでネ、この床で頭をうっちゃ一たまりもあるめえって、仰天してつらまえにかかったって、あなた、こっちはこの体だもの、もろにへたっちゃって……」

沖本は、半分ぐらい説明をきくと、黒く垢のつまった爪の生えた指で事務的にはる子の瞼をひっくりかえして見た。

「大したことはあるまい。――もう一人か二人つれて来い、ここへころがしとくわけにも行くまいから」

「沖本さん! 死んじゃうんじゃないかしら」

しづ子が泣きそうに云った。

「――ふ、こんなことで死んだら女なんてものは一生に二十度ぐらい生れかわって来なくちゃなるまい」

「体のせいだねエ」

「沖本さん!」

ミサ子が沖本の後からつよい声を出して呼んだ。

「医者呼んだんですか」

「いいだろう」

「ひどいわ! だってあなたに容態なんか判らないじゃありませんか。若し、何かあったらどうするんです」

沖本はミサ子のいうことになんぞ耳をかさず、小使がやって来るのを待って、