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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

「はる子さん、クビになったのよ、いよいよ。あんなにいい人だったのに病気してるし、本当にお気の毒だから、私たち慰問してあげようと思うの。お出しなさいよ、二銭でも一銭でもいいわ、気は心だから……」

「――へえ。じゃ僕大枚五銭!」

「おい須田君、電車賃かしてくれるかい? かす約束してくれたら十銭出すぜ僕」

「じゃ、これ」

一円二三十銭集った。だが、男の社員たちのところへ勧誘に行くと、ミサ子は一種の腹立たしさを感じた。多くの者ははる子の首切りにも慰問金募集にも極めて冷淡だ。ミサ子がさし出す勧誘状を手にも取らず、椅子へ腰をずりこましてかけたまま読んで、大町という社員は、

「ふーむ、こりゃ誰が書いたんだい? なかなか文章家じゃないか。ちょいとほろりとさせる効果があるぜ。さすが女だね」

と云った。

「どれ、どれ」

眼をせばめてわざとらしく煙草の煙をさけながら、別の一人が、

「――佐田って……この女亭主持だろう?」

「とんだカンパがはじまったもんだな。じゃバット一箱分喜捨するよ。その代りよく僕の名をつけといてくれね。僕がクビんなったら大いに小野救済カンパを起してもらうから……」