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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
サワ子が苦笑いを泛べた自分の顔を鏡にうつしながら、どこか自棄っぽい口調で云った。
「そいでね、ここの月給なんかほんのお小遣いなんですってさ」
「ふーん」
××○○会社では、女事務員を箇人紹介でだけ雇うのだが、そのとき紹介者が会社の相当どころの者であるとないとでは、入社してからの待遇がちがった。重役の縁辺の者だと、入社当時の月給は同じだが、一年ずつの定期昇給の率や賞与の率がずっと高いのであった。
「――私だってこれで憚りながら入るときは、重役の紹介よ」
れい子が手を洗いながら云った。
「へえ……そうなの! 誰?」
「外田権次郎」
「人事課のひとったら、外田さんの何にお当りですかって、そりゃしつこく訊いたわよ」
「姪ですって云えばいいのに!」
柳の言葉にみんなが笑い出した。
「何でもないんですって云っても、どうかありのままおっしゃって下さいだって!」
「卑怯だわよ。大体会社のやりかたったら!」
サワ子が癇のたった声で云った。
太田千鶴子に対する漠然とした共通な反感が微妙に働いてもとからいた××○○会社の女事務員たちの心持を一つにまとめるきっかけとなっているのがミサ子にさえ、はっきり感じられた。