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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

自分がつまりプロレタリアの一人の女だということがだんだんはっきり分ってミサ子はこの頃腰のすわった、闘いの対手がわかった確かりした心になっているのであった。

洗濯物を洗面器へ入れてもって上り二階の自分の窓前の細い竹竿にかけていると、下で、

「今日は……」

という声がする。小母さんがいないと見えまた、

「――こんにちは……」

ミサ子は、いそいで玄関へ下りて行った。

「いたのね、よかった!」

格子の外に柳と思いがけない坂田とが顔を並べて立っている。赤と藍の細かい縞の割烹前掛姿のミサ子は、

「まあ……」

栓をとって格子を開けた。

「どっかへ出かける?」

「いいえ! さ、上って下さい」

柳はちょいちょい遊びに来たが、坂田は初めてだ。二階へあがると帽子を畳へ放り出しておいて窓の前に立ち、外の景色を眺めた。

「なかなかいいじゃないですか」

「ホラ、そこに、むこうの屋根から見えるの落葉松よ」

柳が、わきに立って指さして説明してやっている。戸棚から坐布団を出しているミサ子に、

「あの鸚鵡まだいるの?」

「いるわ」

「何です?」

「あの家に変な鸚鵡がいて、イヤー、イヤーって鳴くんだって」

林檎を柳がもって来た。