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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
……その内には何とかなるかもしれないから」
もっと外に左翼劇場見物に誘う相手はないかと考えるうちに、ミサ子は三輪みどりを思い出した。元柳原の三角みたいなみどりの室というのへも、つい暇がなくてまだ行かなかった。エスペラント講習会へも近頃みどりは初めの頃ほどきちんとは出て来ない。――
ちょうど退け時間が迫ってシトシト薄ら寒い小雨が降り出した夕暮のことだ。ミサ子は傘なしで、車蓋の濡れ光るタクシーの流れを突切り、丸ビルへかけ込んだ。みどりの勤め先の堂本兄弟商会というのを一階の案内書で調べると、五階にある。エレヴェータアを出てから右へ行くところを左からまわったのでミサ子はあらかた事務所は退けた後の廊下をいい加減歩いた。湯呑所で、小使が荒っぽく後片づけをしている。わきに金文字で堂本兄弟商会と書いたドアがしまっている。
ミサ子はハンドルに手をかけてまわして見た。明かない。二三度まわして見た。それでも開かない。隣室のドアが半開きになって、そこには床を掃いている給仕の姿が見えるが、それはもうよそだ。ミサ子は湯呑所のところへ行って、
「堂本の事務所ではもうみんなひけたんでしょうか」