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はなとひとのはなし

花と人の話

小川 未明

「少女の花」1923(大正12)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,600 字 · 8 页

青空文庫

室内は明るく、いろいろに装飾がしてありましたけれど、日の光は、けっしてそこへは差し込まなかったのです。このことは、花にとって、このうえのない不幸でありました。

三人の令嬢たちは、今夜、このへやで音楽会を開く相談をしていました。そして、あたりを片づけたり、額を懸け換えたり、いくつも腰掛けを持ってきたりしました。あたりの片づけがすむと、一人の令嬢は、アネモネのそばへやってきました、そして、つくづくと花をながめていましたが、やがて美しい顔を花に近づけました。花は、接吻してもらうことかと、うれしそうにふるえていましたが、そうではなかった。

「姉さん、この花には、ちっとも香いがありませんのね?」

「そうよ、香のあるのは、ヒヤシンスなのよ。」すると、妹は、テーブルの上にのせてあった香水のびんをとりあげました。そして惜しげもなく、それをアネモネの花といわず、葉といわず、頭からふりかけました。花は、どんなにびっくりしたことでしょう。

「姉ちゃん! なにするのよ、花が枯れてしまってよ。」と、一人の令嬢がいいました。

「だいじょうぶよ、今晩だけは枯れはしないわ。」と、妹はいって、三人の娘たちは、声をたてて笑いました。