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はなとにんげんのはなし
花と人間の話
小川 未明
「童話」1924(大正13)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,756 字 · 8 页
金持ちは、家へ持っていって二、三日は、飽かず、その花をながめていましたが、そのうちに、だんだん青々とした葉が、弱って、花がしおれてきました。金持ちは、水をやったり、肥料をやったり、日に当てたりしましたが、花は、小さなときから、親しく、慣れた、おじいさんの手を離れてしまったので、万事調子が変わったとみえて、しだいに、いけなくなってしまったのです。
「また、そのうちに、常夏が見つからぬものでない。見つかったら、いくら高くても、買ってくることにしよう。」といって、金持ちは、だんだん弱ってゆく、花を振り向きもせず、庭さきへ投げ出しておきました。
あわれなおじいさんは、その後も、花のことを思い出していました。
「あの常夏は、どうなったろう?」といって、さびしがりました。
そのうちに、おじいさんは病気にかかりました。おばあさんは、はじめて、あのとき、常夏を金持ちに売らなければよかったと悟ったのであります。なぜならおじいさんは、なぐさめられるものがなく、その後は、さびしそうに見られたからです。
おばあさんは、金持ちが、なんとなくうらめしくなりました。自分たちの幸福を奪っていったようにさえ思われたのでした。