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はなとしょうじょ
花と少女
小川 未明
「赤い鳥」1924(大正13)年5月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,667 字 · 8 页
さち子の兄さんは、絵が、たいそう上手でありました。よく、いろいろな形をしたつぼに草花を活けて、それを写生したものであります。さち子は、よくそれを覚えています。
「兄さんが、家においでたら、どんな高い花を買って帰ったっていいけど、絵にかくのでもないのに、こんなに高い花を買って帰ったら、お母さんにしかられはしないだろうか?」と、彼女は、草花屋を出ると心配したのであります。
往来に出ると、風が吹きすさんでいました。それは、温室の中で、寒さを知らずに咲いた花にはたえられないことでした。
さち子は、なるたけ、寒い風を、ばらの花にあてないように、道を歩いてきました。いつしか、町を出はずれ、さびしい道にかかりますと、いままでよりいっそう、風は、荒々しく、強く、吹いていました。
高い木や、やぶの雑木などの枝が、ふるえています。そして、ひとしきり吹いてきた風に彼女は、体でもって、花をかばおうとしたはずみに、花に巻いてあった紙は飛んで、赤と白の花は、むざんに半分ばかり、花弁は散ってしまったのでありました。
さち子は、どんなに、惜しい思いをしたでしょう。せっかく、買ってきたものを、名残もなく散らしてしまっては、それこそ、お母さんに、しかられてももうしわけがないと思いました。