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はなふぶき
花ふぶき
豊島 与志雄
「風雪」1948(昭和23)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,409 字 · 20 页
ぱっとした煌々たる月夜だ。少し歩いていって、柔かい畑地よりも、堅い往来のまん中に、しゃーと小便をしてやった。ずいぶんたまっていたのを、すっかり空にして、いい気持にして、月明の中を歩いた。春たけなわといっても、夜気はひいやりとしている。
家に戻ると、もうみんな寝たらしい。赤木夫婦は二階の室に、千代はその横の小部屋に、そしておれは階下の室に、寝場所はきまっている。電燈だけが明るい、が、外の月夜よりは薄暗い感じだ。おれはも一杯酒を飲み、同じコップで二杯水を飲んで、布団にもぐりこんだ。
その翌日が大変だ。おれは寝坊してるところを、赤木にたたき起され、飯をたいてくれと言うのだ。いったい、朝も晩も、米飯は嘉代さんが自分でたくにきまっている。おれは腑におちなくて、赤木の皮膚の厚い感じの顔を眺めた。
「少しおかんむりなんだ。病院へは僕がついて行くことになってるのに、嘉代は、自分で行くと言いだして、僕には来ちゃあいけないというんだ。まあ……気のすむようにさしとくさ。とにかく、飯はたいてくれよ。」
だいたい、へんな夫婦なんだ。赤木は世間的な策士で、すべてに如才がない。