轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はなさかぬリラ
花咲かぬリラ
山本 周五郎
「新青年」公友社、1946(昭和21)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,378 字 · 36 页
来太の属する部隊が南方群島ちゅうの某所で玉砕したと信ぜられていたことは、日本へ帰って初めて聞かせられたのであるが、富美子はその玉砕の報道のあとで故郷の宮城県へ帰ったという、そして近く家を出て新しい生涯に入るという手紙を寄せたまま、音信が絶えているというのだ。
――新しい生涯とは結婚ではないだろうか。
来太がそう疑ったのも決して無根拠ではないだろう。あのとき二人で植えたリラがついに花咲かずじまいで、富美子が帰郷するとき抜き去ったということも、なにかしら二人の運命を象徴するように思えた。
――だが絶望するのは早い。
来太はそこまで考えをつき詰めると、いつもの癖で遽かにその事実の上へ傲然と腰をおろした。
――すべては長瀞の家を訪ねてからだ。
そして彼はぐっすり眠りこんだ。
呼び起こされたのは列車が水戸に着いたときだった。来太が覚めると、五人は夏蜜柑をむいて「はいお眼覚です」と差し出した、来太はまずその一房を取って掌へ果汁を絞り、両手で受けて顔をごしごし擦ると、紙巻を取り出して旨そうに一服した。
「ここはどこだ、ああ水戸か」そう云って彼はまた左腕をぐいと伸ばし、手頸のところを見る動作をした、「……さて時間はたっぷりあると、そこでおれの計画を話すんだが、村野から酪業農場をやるということだけは他の者も聞いているはずだ