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はなさけるいし
花咲ける石
「週刊朝日別冊 第三号」1954(昭和29)年8月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,620 字 · 24 页
にすぎない。
房吉が江戸を風靡して帰村したという評判が高く、伊之吉の存在なぞは益々太陽の前のロウソクぐらいにしか扱われないから、ついに堪りかねた。門弟をよび集めて、
「ちかごろは田舎者の世間知らずめが威張りくさって甚だ面白くない。法神流なぞというのは山猿相手の田舎剣術だ。江戸は将軍家のお膝元。天下の剣客の雲集するところ。気のきいた名人上手が山猿などを相手にするはずはない。その理由をさとらず、井の中の蛙、大言壮語して田舎者をたぶらかすとは憎い奴だ。道場破りを致すから、用意するがよい」
正月に門弟をひきつれて房吉の道場を訪れ、対抗試合を申し入れたが、さて、やってみると、話にならない。伊之吉の門人は出ると負け、すべて一撃に打ち倒されて、師匠同士の対戦となったが、これも同前、ひとたまりもなかった。
未熟者は身の程をわきまえない。相手を侮って不覚をとったと考え、日を改めてまた試合を申し込んで、これも惨敗に終ったのである。
「ウーム。残念千万だ。憎ッくい奴は房吉。是が非でも奴めを打ち倒さなくては気がすまないが、オレ一人ではダメらしいから、江戸の大先生に御援助をたのもう」