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はなさけるいし
花咲ける石
「週刊朝日別冊 第三号」1954(昭和29)年8月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,620 字 · 24 页
事を好む輩は容赦なく破門せられる掟がきびしく行われており、村と村とが対立して他流試合に及ぶことなども、親睦の目的のほかには行われない例になっていたのである。
上州には古くから馬庭念流という高名な流派が行われている。その馬庭は高崎から二、三里の近在で、上州一円に門弟一万と称するほど流行し、土地から生まれた独得の剣として土民に愛されていたものだ。
その上州に法神流がすごい勢いで流行するようになったから、馬庭の高弟で新井鹿蔵という男、これは自宅が勢多郡で法神流流行のまっただなかに在るものだから、我慢ができなくなった。そこで房吉の道場を訪ねて他流試合を申込み、房吉にしたたか打ち倒されてホウホウのていで戻ったのである。
これが馬庭の師匠、樋口善治に知れたから、善治は非常に恐縮した。
「きくところによれば深山村の房吉という人は剣技も抜群であるばかりでなく、その人柄も万人の師たる高風があり、里人に厚く慕われている立派な人だそうだ。さればこそ法神流が流行するのだ。自らの至らぬことをタナにあげて人を嫉んではならぬぞ」
鹿蔵をきびしく戒め、自身房吉を訪ねて門弟の不埒を深謝したことがあった。