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はなこのちんじゅつ

花子の陳述

豊島 与志雄

「別冊文芸春秋」1952(昭和27)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,726 字 · 22 页

青空文庫

近代の都会人には、軽微な分裂症的症状は多少ともあるもので、それを一々取り上げていては際限がないし、美津子さんのことも、もっと詳しいデーターを集めて、それから然るべき専門医に相談するがよかろうとのことでした。

その医者のところにも、いろいろな患者が見えるそうですが、その中の面白い例を一つ話されました。

それは某大学の学生ですが、時々、電波が来た、電波が来た、と怖がって、一週間ばかり家の中に竦んでいるそうです。そしてその一週間ばかりの蟄居が終ると、あとはけろりとして、外出もするし、学校にも行き、通常の人と少しも変らなくなってしまいます。つまり、周期的に、一月目とか二月目とかに、一週間の電波恐怖が起るのです。

そのような話をして、良吉さんはわたくしたちを安心させようとなすってるようでした。けれど、母も感じたことですし、わたくしも感じたことですが、良吉さんの話の調子といい、その態度といい、へんに冷淡な無関心なところがありまして、内心では果してどう思っておられるのか、会得し難いものが残りました。もう気持ちの底では、美津子さんを見捨てておられたのかも知れません。