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げいじゅつがひつようとするかがく
芸術が必要とする科学
宮本 百合子
「都新聞」1936(昭和11)年7月3~6日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,183 字 · 12 页
新しくされた興味をもって、その本の三分の二まで読んだ今日の感想で、私は多く学ぶところがあり、同時にもとその論文の一部を読んだ折にも漠然と私の心に生じた疑問がある点つよめられ深められた。
著者は、文章学というものが過去の修辞学と異なったものとしてうち立てられる現代の必然性を大体次のように要約されている。
「現代の文章は何よりも先ず、自己の思想があらわに出ていなければならぬ。思想と文章との一致、これが現代文章の唯一の準則である」それだから「今の文章はいにしえのような美辞麗句でなく」「作家の表現しようと考える対象の性質から規定されて来る。」ところで、この著者の理解によると現代の作家は「社会の人々が普通にはもっていないような感情、又は持っていても表現して見せる必要のないような感情については、なんらの表現法がなく、作家がこれを表現するに非常な不便を感じなければならない。しかも作家はこのような事象の表現にしか、その表現意欲を感じなくなっているのである。
なぜなら、作家は、心理の叙述を自己のもっとも生甲斐ある創作対象とするようになっており、心理のうちでも心のもつ反省の能力をあらわしたいと念じているのであるから。