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わかいふじんのちょしょふたつ

若い婦人の著書二つ

宮本 百合子

「新女苑」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,582 字 · 11 页

青空文庫

『煉瓦女工』の作者は、いかにも修飾なく「ガラクタ部落」と自分から呼んでいる生活の周囲を描き出している。非常に達筆に描き出している。そういう環境の中でやりとりされる言葉が生活そのもののむき出しであると同様むき出しである、それが反映した迫力をもっている。けれどもこれ迄の彼女が何も読まなかったということは、これからの彼女がずっとそうであって大変結構だということとはおのずから別であろうと思われる。求める心の一つの表現として、本を読みたい心がないといわれるのでは、心のどんな必然から小説が書き出されて来るかという訝しさも生じるわけなのである。

この『煉瓦女工』と『娘時代』とは、作者の環境として貧富のちがいが極めて著しい。だが、私たちの関心がひかれるのはそういう偶然の貧富の単純な対照ではなくて、この二人の娘さんたちが、それぞれの意味で自分の環境内に立てこもっていて、互が互の社会的な存在を感情の領域のうちにとりこんでいない点では全く似かよっていることに就てである。

鶴見界隈の部落生活で、人々の動き、声、次々のできごと、その消え行く姿などは四六時中、若い野沢富美子の感受性を休みなく刺戟しているに違いない。