轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わかきひのジンギスカン
若き日の成吉思汗
林 不忘
――市川猿之助氏のために――
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 33,827 字 · 68 页
覚えてらしって? そら、あなたが狩猟においでになって、弟の合撒児さまと御一緒に、妾の父の家へ水を飲みにお寄りになったことがありましたわね。
成吉思汗 そんなことがあった? いつごろだったかしらん。
合爾合姫 あの、ほら、はじめて沙摩魯格土から、隊商の着いた年ですわ。
成吉思汗 うむ、可荅安の砂漠に、珍しい蜃気楼が見えるといって、遠くから見物人が押し寄せた、あの翌年だったね。
合爾合姫 ええ、そう――あの時あなたったら、妾に白樺の杖を作って下さるとおっしゃって――。
成吉思汗 そうそう! 覚えている、おぼえている。夏の暑い日でねえ。いや、猛烈な暑さだったな。合撒児のやつの肩車に乗って、高いところの枝を折ろうとする拍子に、手に棘を刺してねえ。
合爾合姫 ええ、妾が大騒ぎして、母から針を借りて取ってさし上げましたわ。
成吉思汗 その傷あとをなめてくれたじゃあないですか。
合爾合姫 記憶えてらっしゃる?
成吉思汗 (じっと自分の指を凝視める)覚えてるとも。誰が忘れるもんか。あの時、砂漠の向うに沈もうとしていた夕陽の色まで、いま眼の前に見るようだ。
断続する胡弓の音。間。
成吉思汗 それから、僕が忘れようとしても忘れることのできないのは、父の也速該巴阿禿児が泰赤宇徒人に攻められた時、あの危急存亡の場合に僕を助けてくれたのは、君だった。