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わかきせいしんのせいちょうをえがくぶんがく

若き精神の成長を描く文学

宮本 百合子

「新女苑」1940(昭和15)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,205 字 · 16 页

青空文庫

そのようにこれらの芸術家たちの心情を刺戟し燃え立たせた原因というものは、一体どこに在ったのだろう。第一に心づくことは、ドイツもフランスも、ロシアも、新教と旧教、ギリシャ正教などのちがいこそあれ、いずれも一般の常識は深い宗教的影響をうけていて、教育そのものが、宗教的教義の重石に窒息されている国柄であったということである。そういう宗教の独断と偏見と偽善との下で、無垢な人間精神の自然な発展が、どんなに圧迫され型をおしつけられ、しかも若く稚い人たちにとってそれとのたたかいがいかに困難無残をきわめているかということを、これらの作家たちは、よりゆたかな心に黙すことの出来ない迄感銘させられているからにほかならない。最も低い、最も御しやすい卑屈さで、目前の役に立つ人間を鋳出していこうとする教育のきまりきった圧力を、よく着実にはねかえし得たものが、つまりは人類の歴史にとって価値ある何かの存在となったということは、歴史が語る実に意味ふかい事実ではないだろうか。

文学が、より美しい、よりゆたかな世界の創造への参加である本質から、すぐれた作家たちがこのような精神成長史としての製作を生んでゆく必然は十分に肯けるわけである。