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くらく
苦楽
上村 松園
ある人の問いに答えて――絵を作る時の作家の心境について私はこう考えています。
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,633 字 · 4 页
これは画のことではありませんが、私は日頃、謡曲を少しばかり習い覚えて、よく金剛巌氏の会などへ出かけます。
私はこの謡曲は、まだ初心同様のもので、申すまでもなく如何がわしいものですけれど、しかし、これもやはり画と同じ意味において、楽しむということを第一の目標にしております。
謡の会の席上などで、私が謡わねばならぬことになった時、席上には、えらい先生方や先輩の上手な方がずらりと並んでおり、ちょっと最初は謡いにくく思っていますが、少し経つと何もかも忘れて、案外大きな声をはりあげて、自分ながら楽しく謡い終わるという次第です。
私の謡い方が、まるで無我夢中で、少々節回しなどはどうあろうと、一向構わず、堂々とやっているには呆れる、と松篁なども言っているそうです。
しかし、私はそれでいいと自分だけできめています。金剛先生なども、あなたが謡っている態度をみていると実に心の底から愉快でたまらぬといったように思える、それが何よりいいのですと言っておられます。
五
この気持も、画の制作の場合と同じだと私は思っています。
画を制作する、謡の修業をする、決して苦しくないことはないものです。