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ちゃのほん
茶の本
岡倉 由三郎
01 はしがき
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,279 字 · 7 页
にすることなく多大の労苦を物ともせずに、章一章こくめいに日本語に写して塾の雑誌『亡羊』に、昭和の二年(一九二七)四月の創刊号から前後十号にわたって掲載し、翻訳者としての最善を尽くし、昨年八月ついに業をおえられたのであるが、同人雑誌の狭い読者だけにその恵みをわかつべきでないことはその読者たちの数々の声からも明らかである。それで兄の嗣子一雄氏とも相談してこれを岩波文庫に収めることにした。もっとも広い読者の鑑賞にこれをささげたいからである。ただしこの種の読み物は、内容にいっそうふさわしい装帳で少数の好事の人にのみ示すべきもの、と考える人々も少なくない。岩波書店主もまたあるいはその一人であられるかも知らぬ。それももとより一理あって自分もそれに異論はない。しかしそれにはまたしかるべき時機がおのずからそのうち生じてくることと信ずる。それはそれとして、それと同時にこの『茶の本』を茶色表紙の岩波文庫の一本に数えるのもまた大いに意義の深い事ではなかろうか。
それからこの本の名を鴻漸のそれに習って『茶経』と言わずに『茶の本』としたわけは、原文が陸羽の書物のそのままの英訳でないことを思い合わせる時、なまじいに、あの本の名を借り用いては、意外の連想から、本書の姿を見ひがめ、『茶経』