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ちゃのゆのてちょう
茶の湯の手帳
伊藤 左千夫
「馬醉木」1906(明治39)年1月、3月、10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,031 字 · 16 页
ことが出来なかったに違いない。
多くは一向其趣味を解せぬ所から、能くも考えずに頭から茶の湯などいうことは、堂々たる男子のすることでないかの如くに考えているらしい、歴史上の話や、茶器の類などを見せられても、今日の社会問題と関係なきものの如くに思って居る、欧米あたりから持ってきたものであれば、頗る下等な理窟臭い事でも、直ぐにどうのこうのと騒ぐのである、修養を待ず直ぐ出来るような事は何によらず浅薄なものに極って居る、吾邦唯一の美習として世界に誇るべき(恐くは世界中何れの国民にも吾邦の茶の湯の如き立派な遊技は有まい)立派な遊技社交的にも家庭的にも随意に応用の出来る此茶の湯というものが、世の識者間に閑却されて居るというは抑も如何なる訳か、
今世の有識社会は、学問智識に乏しからず、何でも能く解って居るので、口巧者に趣味とか詩とか、或は理想といい美術的といい、美術生活などと、それは見事に物を言うけれど、其平生の趣味好尚如何と見ると、実に浅薄下劣寧ろ気の毒な位である、純詩的な純趣味的な、茶の湯が今日行われないは、穴勝無理でない、当世人士の趣味と、茶の湯の趣味とは、其程度の相違が余りに甚しいからである。