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ちゃがゆのき

茶粥の記

矢田 津世子

「改造」1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,568 字 · 30 页

青空文庫

「西尾さん遅いことなあ。また酒コで足コとられたかな」

残った荷物の世話をしてくれるという「栄養と家庭」記者の西尾を姑は先程から待っていた。亡夫の友人で、清子たちがこの東京で頼る唯一人の同郷人だった。

「あの棚コの埃よく払っておけせえ」

西尾へ記念に置いて行く本棚のことだった。最近、晩世帯をもつことになった西尾が、すぐとこの家へ移り住むことになっている。長年住み馴染んだこの家を引き上げるのは姑にも清子にも辛いことだけれど、それかといって梁の上の良人の霊が帰らぬ旅路へのぼってしまった今では、いつまで未練を残していても詮ないことだった。

「役場の伊藤さんさ土産コ買うの忘れたべしちえ。さあさ、困った」

誰それへは何々と指を折って数えたてていた姑が、鏡の中ではたと当惑した顔になった。久しぶりで帰る郷里の親類知己へは二十幾個の土産を用意したけれど、さて数えたててみると落した名前も二三あった。それは途中で買うことにしたが、明朝の仕度だの車中の食事のことだので姑はやはり心も落ちつかぬらしい。座席がとれぬときの用意に新聞紙を忘れないようにと注意もした。

「明日の晩は温泉さ入れるえ。