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ちゃがゆのき

茶粥の記

矢田 津世子

「改造」1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,568 字 · 30 页

青空文庫

お釈迦さんでもやっぱり縮れているじゃないか、と良人に笑われて姑は納得したものの、今度は良人のほうが後あとまでも清子へ恩をきせる始末に、有難迷惑なようでもあった。

仲人の助役の家で初めて清子を見かけたときの姑はニコニコした顔で、

「シャゴマはシャゴマだどもなし、あの嫁コ福耳だから家さうんと福はこんで来るべ」

と至極の上機嫌だったという。

この耳は清子も持物の中で一等自慢にしているもので、肉の厚いぽってりとした耳たぼがとても愛らしい。けれども嫁いでもう十四年、清子もいつのまにか齢を重ねて三十六になったが、この家にはさっぱり福運らしいものが訪れない。

しかし、良人が達者でいた頃のこの一家には毛筋ほどの不平も不満もなかった。ただ一つの清子の希いといえば、ミシンが欲しいということだった。十年来、良人に買ってもらえるのを待っていた。連れ立って外へ出たときなど、清子はきっと良人を促して街通りのミシン店の前に足を停めた。大きな飾窓の中に、黄色い髪をお下げにした桃色の服の西洋人形と一緒に、黒光りのする幾台かの立派なミシンが並んでいた。夫婦は期待と希望に軽い昂奮をおぼえながら、こそこそと値ぶみをし、長いことその前に立って眺めていたものだった。