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ちゃいろっぽいまち

茶色っぽい町

宮本 百合子

「読売新聞」1925(大正14)年10月26日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,087 字 · 8 页

青空文庫

――そのうつり変りの間に、何とも云えず愛嬌があった。可愛ゆさに似たものがこぼれる。

段々監督が箍をゆるめ、馬鹿らしいちゃりを入れ出したので、終りまで見る気がなくなったが、私はそこまで可なり愉快であった。けれども、前後に犇とつめかけている他の見物は、そういう可笑しみは全然感じないらしかった。元になっている蜂雀も知らないらしく一生懸命さに於てだけ俳優に忠実に、生真面目に筋を追っている。私が、友達に、

「もう出ましょうか」

と囁こうとした時であった。視線が、今まで見えなかった左側の群集の方に注がれると、私は、計らずそこに先刻の、着物を抓み上げ、まるでからっぽな後姿で歩いていた若い女を見出した。若い女は、編物細工を眺めた時と同じように情感の死んだ下膨れの顔をきっと上向け、唇一つ動かさず廻転するフィルムを瞶めていた。――

〔一九二五年十月〕