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くさめいきゅう

草迷宮

泉 鏡花

在线阅读泉 鏡花《草迷宮(くさめいきゅう)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,733 字 · 142 页

青空文庫

空を仰ぐと、天井は底がなく、暗夜の深山にある心地。

おお、この森を峠にして、こんな晩、中空を越す通魔が、魔王に、はたと捧ぐる、関所の通証券であろうも知れぬ。膝を払って衝と立って、木の葉のはらはらと揺れるに連れて、ぶるぶると渠は身震いした。

「えへん!」

と揉潰されたような掠れた咳して、何かに目を転じて、心を移そうとしたが、風呂敷包の、御経を取出す間も遅し。さすがに心着いたのは、障子に四五枚、かりそめに貼った半紙である。

これはここへ来てからの、心覚えの童謡を、明が書留めて朝夕に且つ吟じ且つ詠むるものだ、と宵に聞いた。

立ったままに寄って見ると、真先に目に着いたのが濃い墨で、

落葉一枚、

僧は更に悚然とした。

落葉一枚、

二枚、三枚、

十とかさねて、

落葉の数も、

ついて落いた君の年、

君の年――

振返ると、まだそこに、掃掛けて廃したように、蒼きが黒く散々である。

懐かしや、花の常夏、

霞川に影が流れた。

その俤や、俤や――

紙を通して障子の彼方に、ほの白いその俤が……どうやら透いて見えるようで、固くなった耳の底で、天の高さ、地の厚さを、あらん限り、深く、遥に、星の座も、竜宮の燈も同一遠さ、と思う辺、黄金の鈴を振るごとく、ただ一声、コロリン、と琴が響いた。