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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
永井荷風『荷風随筆集(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葛飾土産、鐘の声、銀座、里の今昔、寺じまの記、伝通院、夏の町、日和下駄、深川の散歩、放水路、水のながれ、向嶋、向島、元八まん、霊廟。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,224 字 · 269 页
私の家は二畳に四畳半の二間きりである。四畳半には長火鉢、箪笥が二棹と机とが置いてある。それで、阿久と、お袋と、阿久の姉と四人住んでいるのである。その家へある日私の友達を十人ばかり招いて酒宴を催したのである。
先ず縁側に呉座を敷いた。四畳半へは毛布を敷いた。そして真中に食卓を据えた。長火鉢は台所へ運んで、お袋と姉とは台所へ退却した。そして境界に葭戸を立てた。二畳に阿久がいて、お銚子だの煮物だのを運んだ。(略)さて当日の模様をざっと書いて見ると、酒の良いのを二升、そら豆の塩茹に胡瓜の香物を酒の肴に、干瓢の代りに山葵を入れた海苔巻を出した。菓子折を注文して、それを長屋の軒別に配った。兄弟分が御世話になりますからとの口上を述べに何某が鹿爪らしい顔で長屋を廻ったりした。すると長屋一同から返礼に、大皿に寿司を遣した。唐紙を買って来て寄せ書きをやる。阿久の三味線で何某が落人を語り、阿久は清心を語った。銘々の隠芸も出て十一時まで大騒ぎに騒いだ。時は明治四十三年六月九日。
この時代には電車の中で職人が新聞をよむような事もなかったので、社会主義の宣伝はまだ深川の裏長屋には達していなかった。