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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
永井荷風『荷風随筆集(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:草紅葉、西瓜、梅雨晴、正宗谷崎両氏の批評に答う、裸体談義。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,512 字 · 63 页
」とわたしもともども歎願した。
しかし『通鑑綱目』は二人がそれから半時間あまりも口を揃えて番頭を攻めつけたにかかわらず、結局わずか五拾銭値上げをされたに過ぎなかった。
「これっぱかりじゃ、どうにもならない。」
「これじゃ新宿へ行っても駄目だ。」
質屋の店を出て、二人は嘆息しながら表通を招魂社の鳥居の方へと歩いて行った。万源という料理屋の二階から酔客の放歌が聞える。二人は何というわけとも知らず、その方へと歩み寄ったが、その時わたしはふと気がついて唖々子の袖を引いた。万源の向側なる芸者家新道の曲角に煙草屋がある。主人は近辺の差配で金も貸しているという。わたしの家をよく知っているから、五円や拾円貸さないことはあるまい。しかし何と言って借りたらいいものだろう。
すると唖々子は暫く黙考していたが、「友達が吉原から馬を引いて来た。友達がかわいそうだから、急場のところ、何とか都合をしてくれと頼んで見たまえ。」
「そうか。やって見よう。」とわたしは唖々子をその場に待たせて、まず冠っていた鳥打帽を懐中にかくし、いかにも狼狽した風で、煙草屋の店先へ駈付けるが否や、
「今晩は。