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くさもみじ

荷風随筆集(下)

永井 荷風

永井荷風『荷風随筆集(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:草紅葉、西瓜、梅雨晴、正宗谷崎両氏の批評に答う、裸体談義。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,512 字 · 63 页

青空文庫

もしこの語を以て評すれば露伴先生の文はけだし江戸趣味の極めて深遠なるもので、また古今を通じて随筆の冠冕となすべきものである。『世に忘れられたる草木』『雲のいろいろ』以下幾十篇皆独特の観察に基いている。正宗君は露伴先生が明治三十年代に雑誌『新小説』に執筆せられたこれらの随筆を忘れておられるのであろう。もしこれを思出されたなら、わたくしの雑著についての賛辞は過半取消されるにちがいない。

明治四十一年の秋西洋から帰って後、わたくしは間もなく『すみだ川』の如き小説をつくった。しかし執筆の当時には特に江戸趣味を鼓吹する心はなかった。洋行中仏蘭西のフレデリック・ミストラル、白耳義のジョルヂ・エックー等の著作をよんで郷土芸術の意義ある事を教えられていたので、この筆法に倣ってわたくしはその生れたる過去の東京を再現させようと思って、人物と背景とを隅田川の両岸に配置したのである。短篇小説『狐』と題したものもまた同様である。わたくしはその頃既に近代仏蘭西の小説を多く読んでいた事については、窃に人後に落ちないと思っていたが、しかしいざ筆を取って見ると文才と共に思想の足りない事を知って往々絶望していたこともあった。