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くさもみじ

荷風随筆集(下)

永井 荷風

永井荷風『荷風随筆集(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:草紅葉、西瓜、梅雨晴、正宗谷崎両氏の批評に答う、裸体談義。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,512 字 · 63 页

青空文庫

入場料は拾円で、蓄音機にしかけた口上が立止る人々の好奇心を挑発させていた。しかし入口からぽつぽつ出て来る人たちの評判を立聞きすると、「腰巻なんぞ締めていやがる。面白くもねえ。」というのである。小屋掛の様子からどうしてもむかし縁日に出たロクロ首の見世物も同じらしく思われたので、わたくしは入らずにしまった。このエロス祭とよく似ていたのは日本館の隣の空地でやっていた見世物である。黒眼鏡をかけた女がその首だけを台の上に載せ、その身体は見えないようにしてある。呼込みの男が医学と衛生に関する講演をやって好加減入場者が集まる頃合を見計い表の幕を下す。入場料はたしか五拾円であった。これも、わたくしは入って見てもいいと思いながら講演が長たらしいのに閉口して、這入らずにしまった。エロス祭と女の首の見世物とは半歳近くつづいて、その年の秋にはなくなっていた。

ジャズ舞踊と演劇とを見せる劇場は公園の興行街には常盤座、ロック座、大都劇場の三座である。踊子の大勢出るレヴューをこの土地ではショーとかヴァライエチーとか呼んでいる。西洋の名画にちなんだ姿態を取らせて、モデルの裸体を見せるのはジャズ舞踊の間にはさんでやるのである。